会社帰りに急いで通夜に駆けつける際、普段使っているビジネスバッグをそのまま持ち込んでも良いのか迷うビジネスマンは多いですが、基本的には葬儀の場にビジネスバッグを持ち込むことはマナー違反とされており、その理由は大きく分けて「素材」「デザイン」「場にそぐわない雰囲気」の三点に集約されます。まず素材に関してですが、多くのビジネスバッグに使用されているナイロン製や光沢のある革製品はカジュアルな印象を与えたり、「殺生」を連想させたりするため、仏教的な価値観に基づくと不適切と判断されることが多く、特にワニ革やヘビ革のような型押しデザインは厳禁です。次にデザインですが、ビジネスバッグは機能性を重視しているため、ポケットが多くついていたり、ブランドロゴが大きく入っていたり、金具がキラキラと光っていたりと、装飾過多なものが多く、これらは「悲しみの場」である葬儀の厳粛な雰囲気には馴染まず、「仕事のついでに来た」という事務的な印象を強調してしまいます。そして何より、葬儀は故人とのお別れをする非日常の神聖な空間であり、そこに書類やノートパソコンが詰まった現世的なビジネスツールを持ち込むこと自体が、場の空気を壊す行為とみなされるため、可能な限り手ぶら、あるいは専用のフォーマルバッグで参列するのが理想です。しかし、どうしても仕事帰りで荷物がある場合は、駅のコインロッカーに預けるか、斎場のクローク(手荷物預かり所)を利用して、会場内には貴重品と数珠、香典だけを持って入るのがスマートな大人の対応であり、大きな鞄を足元に置いて焼香をするような無作法は避けるべきです。どうしても預ける場所がない場合は、サブバッグとして黒の布製トートバッグなどを用意し、ビジネスバッグは見えにくい場所に置かせてもらうなど、周囲への配慮を見せることで、「マナーを知らない人」というレッテルを貼られるリスクを回避することができます。