葬儀用のバッグ選びにおいて「金具が目立たないもの」を選ぶことは鉄則とされていますが、なぜ金具がいけないのかという理由を正しく理解している人は意外と少なく、単なる慣習だと思っていると痛い目を見ることになります。葬儀における「光るもの」は、アクセサリーであれバッグの金具であれ、華美な印象を与え、故人を悼む場にふさわしくない「派手さ」を象徴するものとして忌避されるのが第一の理由ですが、それ以上に重要なのは、金属の冷たい輝きが「攻撃性」や「現世の欲望」を連想させ、穏やかな成仏を願う祈りの場に水を差すとされている点です。特に、ゴールドの金具はシルバーに比べて主張が強く、お祝い事やパーティーを連想させる色味であるため、たとえ小さなバックルやファスナーであっても、黒一色の喪服の中では悪目立ちしてしまい、周囲の参列者に不快感を与える可能性が高くなります。また、カチャカチャと音が鳴るような金具がついているバッグも、静寂が求められる読経中や焼香の際に耳障りな音を立ててしまう恐れがあり、これは音のマナーとしてもNGですので、マグネット式やファスナーの引き手が布で覆われているものなど、静音性に優れたデザインを選ぶことが求められます。ただし、底鋲(バッグの底についている金具)や、内側のファスナーなど、外から見えない部分の金具に関しては許容範囲とされていますし、最近ではブラックニッケルやガンメタリックといった、黒に近い目立たない金具を使用したフォーマルバッグも増えているため、完全に金属ゼロでなければならないわけではありません。重要なのは「ピカピカと光を反射しないこと」であり、もし手持ちのバッグの金具が目立つ場合は、黒いテープで一時的に隠すか、金具のある面を体側に隠して持つなどの応急処置を行い、少しでも弔意を表す姿勢を見せることが、参列者としての最低限の礼儀と言えるでしょう。