葬儀用の腕時計を選ぶ際、最も重視すべきポイントの一つが「ベルトの素材」であり、これさえ間違えなければ大きくマナーを外すことはありませんが、逆にここを間違えると全体の印象を損ねてしまうことになります。最も正式で推奨されるのは「黒の革ベルト」であり、特にクロコダイルやトカゲなどの型押しではない、スムースな質感の牛革(カーフ)がベストとされています。革ベルトは落ち着いた印象を与え、喪服の黒とも自然に調和するため、弔事におけるスタンダードとして定着していますが、殺生を連想させるという理由から、厳密な仏教マナーでは革製品全般を避けるべきという考え方もあり、その場合は布製や合成皮革のベルトを選ぶのが無難です。次に許容されるのが「シルバーの金属ベルト(ステンレススチール)」であり、ビジネスシーンで使われる一般的なメタルバンドの時計であれば、派手な装飾がない限り葬儀で着用しても問題ありませんが、光の反射が強い鏡面仕上げ(ポリッシュ)のものよりは、光沢を抑えたヘアライン仕上げ(サテン)のものの方が好ましいです。一方で、絶対に避けるべきなのは、ゴールドの金属ベルトや、赤・青・白といった派手な色の革ベルト、そしてカジュアルな印象を与えるシリコンやナイロン、ウレタン素材のベルト(G-SHOCKなどのスポーツウォッチに多い)です。これらは「遊び」や「スポーツ」の要素が強く、厳粛な葬儀の場にはそぐわないため、たとえ黒色であっても避けるべきとされています。また、夏場などで汗をかきやすい時期に革ベルトを着用するのが不快な場合は、金属ベルトを選ぶか、時計を外してポケットチーフのように胸ポケットに忍ばせておくという方法もあります。ベルトは簡単に交換できるパーツでもありますので、冠婚葬祭用に一本、黒のシンプルな革ベルトを用意しておき、必要な時に付け替えるという習慣を持つことも、大人の身だしなみとしてスマートな方法です。