私がまだ幼かった頃、祖母の葬儀が執り行われました。子ども心に、黒い服を着た大人たちが集まる静かで厳粛な雰囲気は、どこか怖く、近寄りがたいものでした。そんな私の目に留まったのが、祭壇に飾られた、まるで作り物のお花のような、淡い色合いのお菓子でした。それが、私と落雁との初めての出会いです。葬儀が終わった後、母がそのお菓子の一つを私の手のひらに乗せてくれました。「これは落雁といってね、おばあちゃんのために皆が供えてくれた大切なお菓子だよ。お下がりをいただくと、おばあちゃんが喜んでくれるからね」。そう言われても、当時の私にはその意味がよく分かりませんでした。ただ、砂糖の塊のようなそのお菓子は、ひどく甘く、口の中の水分を全部持っていかれるような、不思議な味がしました。正直に言って、美味しいとは思いませんでした。しかし、その落雁を口にしながら祖母の遺影を見上げていると、いつも優しく笑っていた祖母の顔が浮かび、悲しくてたまらなかった気持ちが少しだけ和らいだのを覚えています。大人になってから、葬儀に落雁を供える意味を知りました。故人が極楽浄土へ行けるようにという願い、彼の世で食に困らないようにという祈り。あの甘いお菓子には、参列者一人ひとりの、祖母への深い愛情が込められていたのだと気づいた時、胸が熱くなりました。そして、あの時母が言った「おばあちゃんが喜んでくれる」という言葉の本当の意味も理解できた気がします。お下がりをいただくことは、故人の存在を自分の内に取り込み、これからも共に生きていくという誓いのようなものなのかもしれません。今では、法事の席で落雁を目にするたびに、祖母の葬儀の日のことを思い出します。あの不思議な甘さは、私にとって、故人を偲ぶ人々の温かい心の味として、記憶に深く刻まれています。
祖母の葬儀で知った落雁の温かさ