2025年11月
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葬儀で使うポチ袋の基本マナー
葬儀という厳粛な儀式の中で、遺族としてお世話になった方々へ感謝の気持ちを伝えるために「心付け」を渡す習慣があります。この際に現金を包むために用いられるのが、ポチ袋や小さな封筒です。現金を裸で渡すことは大変失礼にあたるため、こうした袋の準備は喪主や遺族にとって大切な務めの一つとなります。葬儀の場でポチ袋が活躍する場面は多岐にわたります。例えば、霊柩車やマイクロバスの運転手、火葬場の係員、そして受付や駐車場係など、葬儀の運営を陰で支えてくれた方々へ「御礼」として渡します。また、遠方から来てくださった僧侶や、特別な役割を果たしてくれた親族へ「御車代」として渡すこともあります。では、どのようなポチ袋を選べば良いのでしょうか。最も大切なのは、弔事の場にふさわしい、控えめでシンプルなデザインを選ぶことです。色は白無地が基本であり、最も無難です。柄が入っているものを選ぶ場合は、蓮の花や百合といった、仏教やキリスト教で弔いの意味を持つ花が描かれたものが適しています。お祝い事を連想させる鶴亀や松竹梅、キャラクターものやカラフルなデザインは絶対に避けなければなりません。表書きは、渡す目的によって書き分けます。一般的に感謝の気持ちを伝える場合は「御礼」や「志」と書きます。「志」は宗教を問わず使える便利な言葉です。「御車代」や、僧侶へのお食事代として渡す「御膳料」など、目的が明確な場合はそのまま記載します。筆記用具は薄墨ではなく、感謝の気持ちをはっきりと伝えるという意味で濃い墨の筆ペンやペンを用いるのが一般的です。ポチ袋は、感謝の心を形にして伝えるための大切な道具です。相手に失礼のないよう、正しい知識を持って準備し、心を込めてお渡しすることが、故人に代わって遺族ができる最大の配慮と言えるでしょう。